今月の活動
『PLUMBUM(Plb.)プランボン』
CHKの荻野千恵美です。
厳しい暑さが続いていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
私たちは、先日、涼を求めて、比叡山に登ってきました。
最寄り駅「京阪「びわ湖浜大津」から
終点の「坂本比叡山口」まで15分の距離です。
二両連結の小さな電車ですが、琵琶湖の西側を山沿いに走り、
山麓の深まった緑と琵琶湖の美しい遠景の両方を楽しむことができます。
「坂本比叡山口」駅から坂本ケーブルの乗り場までは、
歩いて20分ほどの緩やかな上り坂です。
山からの涼しい風に吹かれながら、
美しい石積みの道を楽しむはずのつもりでしたが、
考えが甘過ぎました。坂本は町中に比べれば清涼な土地ですが、
さすがに、猛暑の中、夏の容赦ない日差しに照り付けられ、
汗だくになってしまいました。
ケーブルに乗ると11分で頂上に着きます。頂上駅に降り立つと、
気温は3度下がり、すがすがしい霊山の風が吹いていました。
10分ほど歩けば、境内です。
境内には根本中堂、大講堂はじめ多くの国宝、重要文化財などがあり、
荘厳な雰囲気です。
比叡山坂本ケーブル
https://www.sakamoto-cable.jp/
でも、私の一番のお気に入りは比叡山・延暦寺会館の喫茶「れいほう」。
ここからは、琵琶湖が一望できます。
そしていつ行っても、お茶を楽しみながら、
季節を感じることのできる場所です。
今回は猛暑の最中だけに、空の青さは真夏の力強さに満ちあふれ、
浮かぶ雲はわんぱく坊主のように元気いっぱいでした。
比叡山延暦寺会館「れいほう」の開運スイーツ
https://www.biwako-visitors.jp/staff/blog/detail/bonji-teramisu/
さて、
今月は、今の季節とは真逆のエネルギーを持つレメディをご紹介したいと思います。
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『PLUMBUM(Plb.)プランボン/鉛)』
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Plb.は、鉛を原料とするレメディです。
このレメディは、CHK専門コースでは、
3年目か4年目に学ぶ、ややマイナーな存在です。
CHK専門コースでのレメディの学習は、まずは、
現物質情報を発表していただくことから始めます。
「鉛」は、柔らかく加工しやすく、腐蝕しにくいので、
古代から現代にいたるまで、様々な用途に使われてきました。
とても便利で、人間にとってありがたい存在なのですが、
毒性が強いというやっかいなものでもあります。
しかも、この毒は、吸収されると9割以上が骨に沈着し、
その半分が排出されるのに5年かかるといわれています。
人体への影響は様々で、疲労感・不眠・神経過敏・頭痛・精神異常から、
脳症による死 に至るまで、さまざまな障害を引き起こします。
現代社会は、電磁波防止、釣りの重りや塗料、各種電気製品に含まれ、
工場からの排煙にも混ざっています。
古代から上水道管には使われてきましたし、
ワインの保存剤にも使われてきました。
徳川時代は、将軍の乳母の白粉に含まれていて、大切な後継ぎが早逝したり、
病気がちだったりだった要因の一つだったとも言われています。
大気汚染が原因で降る酸性雨となって、土壌や海、川を汚し、
また、燃えないゴミとして埋められたものの中に含まれた鉛が、
土壌を汚染し、河川や海を汚したりもしています。
鉛は占星術では鉛は「土星」と関係が深いとされています。
土星には、農耕や狩猟の神が住むと考えられていました。
また、「土星」は、凶星とみなされていたようで、
英語ではサターン(サトゥルヌス)と言われています。
ローマ神話に登場するサトゥルヌスは、
将来自分の子に殺されるという予言を恐れ、
自分の子供を次々に飲み込んでいった伝承から来ています。
17世紀のオランダのルーベンスやスペインのゴヤは、
この伝承をモチーフにした絵を描いています。
この絵は、自己破滅への恐怖からの狂気を表現しているそうです。
非常に暗い重い絵ですが、このレメディの質感と関係しています。
ルーベンス「我が子を食らうサトゥルヌス」
https://www.artpedia.asia/saturn-%28rubens%29/
ゴヤ「我が子を食らうサトゥルヌス」
https://www.artpedia.asia/saturn-devouring-his-son/
CHK専門コースの授業では、現物質の情報が出尽くしたら、
このレメディを必要とする人物像を想像して話し合います。
特にそれぞれが感じた質感を述べて頂きます。
明るいか?暗いか? 軽いか?重いか? 冷たいか?暖かいか?
柔らかいか?固いか?乾いているか?湿気を含むのか?
どんな状況にいるのかな?
身体のどこに関係しそう?
どんな問題を抱えているのか?
自由にいろいろ想像してみます。
想像してから、マテリアメディカ(レメディの解説書)を開くと、
いっそう面白いです。
想像した症状と、マテリアメディカの記述は、
近いイメージが出てくるから不思議です。
インドの巨匠、ラジャン・サンカランは、著書”Soul of Remedelies”の
中で、以下のような妄想(Delusion)の症状を挙げています。
MIND; DELUSIONS, imaginations; castles and palaces, sees
城が見える。
MIND; DELUSIONS, imaginations; murderer, everybody around him is a
自分のまわりはすべて殺人者
MIND; DELUSIONS, imaginations; pursued, he is; soldiers, by
兵士に追いかけられている
MIND; DELUSIONS, imaginations; conspiracies; against; him, there are
自分に対する陰謀がある
MIND; DELUSIONS, imaginations; devils; persons are, that all (2)
すべての人が悪魔に見える
MIND; DELUSIONS, imaginations; poisoned; about to be, that he is
毒を盛られようとしている。
「妄想(Delusion)」というのは、
その人が住んでいる間違った思い込みの世界です。
Plb.の人はこのような世界に住んでいるといえます。
本当はそうではないのに、彼は、そうだと思い込んで苦しんでいるのです。
庶民的な感じではなさそうです。城に住んでいるような、支配階級の人。
そんな立場にありながら自分のいる場所は、すでに崩れかけている。
攻撃を受ける、とても危険な状態にいるという感覚。
マテリアメディカ(レメディの解説書)には、
「贅沢な生活、あらゆる最善のものを享受し楽しんだ。」という記述があります。
「楽しんだ」という過去形なのが印象的です。無感動で、イライラしている。
凝り固まって、硬化した態度や傾向。
危険でスキャンダラスな振る舞いに刺激を見出したりします。
身体症状は、神経や筋肉の硬化、無感覚、退縮、痙攣、脱力。
命がだんだんと、みずみずしさを失って、固まり、縮むイメージです。
最もPlb.らしい症状の一つは・・・
ABDOMEN; RETRACTION; Umbilicus attached to spine ; as if
(腹部;退縮;臍;まるで脊柱にくっつくかのような)です。
“RETRACTION(退縮)”というのが、このレメディのキーワードです。
退縮の感覚は、全身~目、胃、腹部、肛門、睾丸にわたり出てきます。
鉛は、重金属。毒性が強い物質で、人間の営みとともに自然界に散らばり、
そして人間の健康をじわじわとむしばんでいきます。
病は深く、業病のような病に罹りやすいかもしれません。
マヤズム(病の傾向)分類では、最も深く重いもの~SYPHILISマヤズムに
位置付けられています。
Verat.(Veratrum album)バイケイソウ
こんにちは、荻野千恵美です。
6月に入って、ご近所の庭に咲くアジサイの花が、
一雨ごとに色づいていくのを楽しみに見ていました。
6月中旬、少し体調を壊してしまって、1週間ほど家にこもっているうちに、
アジサイはすっかり咲き切って、先の方から花弁が枯れ始めました。
ふと気づくと、アジサイの横では、
梅雨の頃から秋まで夏中咲いてくれる桔梗が、咲き始めていました。
夏休みを楽しみにしている子供のように、真夏の出番を控えて、
朝顔はつるを毎日少しづつ伸ばし、
ひまわりも初夏の陽を浴びてすくすくと背丈を伸ばしています。
私たちの生活や健康状態がどうあろうと、
自然は変化し続けているのだと、あらためて感じました。
さて、
今回は、5月に専門コース2年生の授業で勉強した後、
すぐにブログに投稿したレメディをご紹介したいと思います。
https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12805203678.html
『Verat.(Veratrum album)』
原料はバイケイソウ(梅恵草)。
白緑色の花が梅に似ていることと、葉が鶏卵に似ていることから、
バイケイソウという名がついたそうです。
緑色の花が多く、普通の花とは違い、どこか奇妙な印象を受けます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%82%A6
この植物の毒性は強く、交感神経に作用し、各内臓の痙攣をおこします。
激しい嘔吐と下痢から極度の衰弱になります。
顔面蒼白、冷汗がでます。
悪寒で体中が氷のようになり、頭痛がして頭が氷漬けになったような感覚になります。
この症状は、コレラにとても良く似ているようです。
今の日本では、なじみの少ないのですが、かつて日本でも恐れられた病気です。
https://www.asahi.com/articles/SDI202001173911.html
19世紀、コレラが欧州で蔓延した時に、このレメディVerat.は、
Camph.カンファ―(樟脳)、Cupr.カプラム(銅)とともに、
素晴らしい治癒効果を上げ、ハーネマンの名声を高めました。
衛生状態の良くないところでは、今も蔓延するこの病気は、
今まで元気に生きていた人に突然襲い掛かります。
激しい下痢と嘔吐が、人間の大切な命のもとである水分を急激に奪ってしまいます。
このレメディの特徴は「虚脱」状態です。
マテリアメディカでは、”Collapse”という言葉で出てきます。
意味は、虚脱、崩壊、倒壊、衰弱、挫折・・・。
人間の身体における「水」という存在は、
人間の社会的な面に置き換えるとどんなものになるでしょうか?
血液やリンパ液、粘液や漿液、唾液などとなって、
身体のスムーズな循環を支えてくれる存在のような役割を、
社会において担ってくれているのは「お金」ではないかしら。
「お金」によって、人は自分が生きるのに必要な循環を得ているとも言えます。
急激で激しい脱水から虚脱状態になるという現象が、
社会的な側面で起きたらどうなるかしら?
それが、このレメディの精神症状を表しています。
インドの巨匠、ラジャンサンカランは
著書“Soul of remedeis”で以下のように書いています。
”社会的地位を失ってしまったというフィーリングがあり、
いかなる手段を用いてもすぐそれを回復しなければならず、
さもないと自分は終わりだと感じている。
一度に何かを得る方法、たとえばギャンブルとかうそをつくとか
詐欺行為とかいった方法を見つけようとする。
冨や自分の重要性を示すことがVerat.の際立った特徴であり、
これを使って失った社会的地位を埋め合わせようとする。”
身体における水分というのは、
この世での人としての冨や地位にあたるかもしれません。
サンカランは、このレメディをプルービングしたときに見た夢についても書いています。
“まもなく引退することになった年老いた男性は、
引退することで社会的な地位を失うことになっていた。
彼はそのことを恐れていて、
まだ、自分は重要人物であることを示すために派手なパーティを開いた。”
嘘をついてでも、自分の裕福さを示したい。
このレメディを必要とする人は、本人だけでなく、
その前の世代が社会的な地位を失った場合にも多いそうです。
宗教や政治、ビジネス、などの世界での指導者のなかには、
こういった状態の人が結構いるのかもしれません。
サンカランと並ぶインドの巨匠サルカール先生は、
その著書“Just you see”のなかで、このレメディについて、
“Ars.アルセニカムとHyos.ハイオサイマス(ヒヨス)の色合いがあると思う。”
と書いています。
“このレメディは主要な急性病レメディの1つとして使えるが、
大多数はArs.アルセニカムを代わりに使っている。”
一般に、真面目でお堅いいArs.アルセニカムの人は、
好色・呪う・だます、とはご縁がなさそうです。
ヒヨスのタイプの人は、その気がありそうですが。
Verat.は下痢と嘔吐が同時に起きるアルセニカムと症状が似ているので
「植物の砒素」ともいわれます。
私は、このレメディの授業をするときはいつも、
作家・渡辺淳一が書いた「遠き落日」という本をご紹介しています。
https://honto.jp/netstore/pd-book_26001244.html
野口英世の人生を描いた本ですが、
子供のころに読んだ英雄伝記とはまるで違った人物像に驚きました。
ものすごい野心家で、浪費家、嘘つき、大ぼら吹き。
でも、どこか憎めない可愛い愛すべき人でもあります。
サンかランも、Verat,は、一緒にいて楽しい人だと記しています。
“おしゃべり、歌い、冗談を言い、陽気である。
また、神とつながっているというような
愉快なファンタジーを思い描いていたりもする。”
ぜひ一度「遠き落日」を読んでみて!
Tub.(Tuberculinum) 結核菌
こんにちは、荻野千恵美です。
緑の燃え立つ季節、ゴールデンウイークを皆さんはどのように過ごされましたか?
私たちは、多くの人で混み合う観光地を避けて、
ご近所の大津の街中での散策を楽しみました。
皆さん、明治に起きた日本を揺るがすほどの大事件「大津事件」をご存知ですか?
明治24年、日本を訪問中のロシア皇太子が警備の巡査に切り付けられたという事件です。
(大津事件)
https://info.yomiuri.co.jp/media/yomiuri/ayumi/ayumi_02.html
私たちは、その事件のあった近くの旧東海道沿いに住んでいます。
旧東海道を京都に向かいまっすぐ行った突き当りの長等山(ながらやま)山上には、
三井寺観音堂が威風堂々と建っています。
江戸時代の人々は、東海道をてくてく歩いて、大津の宿場町まできたとき、
山上に立つ観音堂をどんな気持ちで眺めたのでしょうか。
観音堂は、三井寺の展望台のような存在で、
旧東海道側からの急な階段を上り切っていくこともできますし、
なだらかな坂道を迂回して登っていくルートもあります。
もちろん、私たちはいつもなだらかなルートを選んで歩きます。
この道には、たくさんの紅葉の木が植えられています。
三井寺は桜の名所でもあり、紅葉の名所でもあります。
ゴールデンウイークの良く晴れた日に、この道を歩きましたが、
青紅葉(あおもみじ)の葉を通して降り注ぐ、5月の陽の光は若々しく、
その上には真っ青な空が見えて、初夏のかおりも漂っていました。
観音堂わきの展望台からはびわ湖に面した大津市街を一望することができます。
(三井寺・観音堂)
https://tabi-mag.jp/sg0104/
10年以上前になりますが、私が初めてここを訪れたとき、
自分の生まれ育った神戸の街に似ているのに驚きました。
大津は、神戸が開港するずっと以前の江戸時代に、
宿場町、港町として大変賑わい栄えたところです。
私が大津と神戸が似ていると感じたのは、どちらも、
海と山が近い港町の地形をしたところだったからでした。
大津は、神戸のような明るく軽やかな雰囲気は少ないのですが、
街のそこかしこに、古くに賑わった時代の余韻のようなものが、
残っていて、私の心を和ませてくれるところです。
さて今回は、少し変わったものを原料とする
レメディをご紹介したいと思います。
(2017年にブログでもご紹介しました。
https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12250569748.html)
<Tub.(Tuberculinum) 結核菌>
ホメオパシーのレメディの原料となるのは、
主に自然の三界~鉱物・植物・動物です。
鉱物は、結晶を作る構造的な存在です。
鉱物レメディを必要とする人は、秩序立っていて、構造的です。
自分には・・・
家族や周りの人との関係性を作ること。
自分や家族の安全を確保すること。
創造性を発揮し、表現すること。
自分の社会的責任を果たすこと
などに対して
・・・自分にはその役割を果たす力が欠けているためにうまくやって
いけないと考えがちです。
植物は、地面に根を張っているため、動くことができません。
周辺環境~雨風・暑さ寒さ・光や音等~の影響を強く受けます。
敏感に感じて適応しようとする存在です。
植物レメディに合う人は、何事にも敏感に反応します。
敏感で弱く感じられるかも知れませんが、
水と光さえあれば生きて行く強さも持ち合わせています。
動物は、自分の命をつなぐために、餌を求め、子孫を残すために異性を求めます。
餌の獲得にも、パートナーの獲得にも避けられないのが、競争です。
動物レメディの人は、サバイバルというテーマを持ちます。
魅力的に振る舞うことも必要ですし、ライバルには強い嫉妬心を持ちます。
レメディの原料には、自然の三界以外にもあります。
その一つに、人が病に侵された患部を原料とするレメディがあり、それを
Nosodes(ノソーズ)と呼んでいます。
Nosodes(ノソーズ)のレメディを必要とする人ってどんな人だと思いますか?
もし、あなたが、結核の病巣部だったらどんな気持ち?
・・・なんて考える人は、普通はいませんよね。
でも、クラシカルホメオパシー京都(学校)では、
このようなことをイメージしたり、話し合ったりする時間を大切にしています。
身体に備わっている生命力(免疫)は、病巣部の存在を許そうとしませんが、
生命力(免疫)が弱って来ると、病巣部ができてきます。
病巣部側も、存在するからには、少しでも大きくなりたいし、繁栄したい。
しかし、繁栄しすぎると宿主の人間が死んでしまい、自分の命も尽きてしまいます。
そういう矛盾をかかえた苦しい存在です。
インドの巨匠サンカランは、Nosodesのテーマを、
「死にもの狂い・やけくそ・絶望」と表現しています。
ハーネマンは、3つのマヤズム(病の素因)を提唱しました。
Psora ソ-ラ(疥癬)マヤズム。
Sycosis サイコシス(淋病)マヤズム。
Syphilis シフィリス(梅毒)マヤズム。
それぞれのマヤズム毎の代表レメディは、各病巣部から作られたレメディ
とも言えます。
ハーネマンの生きた時代(18世紀)の慢性病は、皮膚病と性病が中心でした。
しかし、時代がもう少し進むと、世界は、結核の時代を迎えます。
ヨーロッパでは、産業革命が起きて、都市に人が密集し始めます。
人々はまだ貧しく、栄養状態も衛生状態も悪かった頃に大流行したのが結核です。
結核菌の感染力は強く、多くの人が若くして亡くなりました。
最初は、風邪のような症状ですが、肺だけでなく、全身を巡り、潜伏し、時には
脳まで侵す恐ろしい病気です。
日本では幕末から明治、大正、昭和20年代くらいまでは、国民病として怖れられました。
1年生の2月のレメディ学習では、
結核に感染した人の患部から作ったレメディ
Tub.(Tuberculinum)を学びました。
このレメディにマッチする人は、風邪を引きやすく、
呼吸器系の症状を起こしやすい人。
関節炎の痛みや頭痛も、持ちやすい人です。
Tub.(Tuberculinum)の精神症状は、結核が恐れられていた時代に、
この病気にかかって若くして亡くなった人の生き様と重なるところが多くあります。
高杉晋作。
幕末に長州藩で尊王攘夷の志士として活躍した人です。
当時の社会の在り方に危機感、不満感を持ち、世の中を変えようとしました。
彼の作った有名な歌。
「おもしろき こともなき世をおもしろく すみなすものは 心なりけり」
Tub.の人の精神症状の中心は「現状不満足」そして、
現状下での息苦しさから「変化」を求めるということです。
人生を短いと感じ、激しく理想や恋、芸術に捧げ、燃え尽きるような人。
ご存知のように、高杉晋作は「奇兵隊」を組織し、
たぐいまれな統率力でそれを率いるとともに、英米仏蘭の四か国連合と戦い、
そして和平交渉するなど、数々の伝説的な仕事をしますが、
結核で27歳の生涯を閉じます。
(高杉晋作/萩市観光協会公式サイトより)
竹久夢二は、49歳まで生きた人ですが、やはり結核で亡くなっています。
彼は、大正時代に主に活躍しています。
明治期の日清・日露戦争と、昭和の太平洋戦争との間。
束の間の平和を謳歌できたころ。
夢二は、大正ロマンの中心人物のひとりです。
竹久夢二が描く美人画は、みんな痩せて白い肌。呼吸器が弱そうです。
Tub.(Tuberculinum)の人は、とてもロマンティックな人でもあります。
古典的なマテリアメディカ“Allen’s KeyNote”では、Tub.の人の体型について
「背が高く、痩せて、胸が狭くて、青白い顔」だと書かれています。
石川啄木も、結核で26歳で亡くなっています。
短い人生なのに、故郷の岩手から東京に出て、北海道にもわたり、仕事をしています。
恋をし、結婚して子供をもうけ、たくさんの歌を作り、
社会主義運動にもかかわったようです。
生涯貧しく、社会への不満から、社会運動に向かっていきました。
彼が生きたのは、日本全体が、一部特権階級をのぞいて、とても貧しい時代でも
ありました。貧しさや社会への不満に逆らいながら、激しく短く生きた人たちの
イメージです。
20世紀前半、パリに起きた芸術運動~エコール・ド・パリの画家のひとり、
モディリアーニ。
彼の作品にも、痩せて背が高そうな人が出てきます。
彼は、イタリア人でした。このころ、世界中からパリを目指して画家を目指す若者
が集まっていました。日本からも、佐伯祐三や藤田嗣治がパリで活躍しています。
彼らも保守的な日本の画壇に我慢しきれず、パリに旅立った人たちです。
ここにあげたいずれの人たちもとても短い人生を駆け抜けて行きました。
Tub.の人は、まるでろうそくの両端から火をつけるような人だといわれています。
E.B.Nashの古典的なマテリアメディカでは、このレメディにマッチする人のことを、
コスモポリタンな人だと書かれています
コスモポリタンとは?
一つの国にとらわれない国際人。世界主義。などという意味があります。
エコール・ド・パリの画家たちにも、コスモポリタンなものを感じます。
結核で亡くなったのではないのですが、
おもしろいTub.の症状を持った歴史上の人物が日本にいます。
BACK; HAIR growth spine; along the children; dark or long, fine hair on back of
(背部;毛-黒い長い立派な毛が背骨に生えている子供)
この症状を持つレメディは、Tub.ただ一つです。
幕末の日本で生まれた、坂本龍馬。
彼は、生まれた時、背中に立派な毛が生えていたので「竜馬」と名付けられたそうです。土佐の古い社会が息苦しくてたまらなかった竜馬。
脱藩して、故郷を出奔した後、今度は古い日本全体の制度を壊して、
新しい社会に変えようと日本中を駆けずり回った人です。
・現状への不満足。
・変化への希求。
これらは、Tub.の人の持つ中心テーマです。
また、彼は旅が好きでした。
旅なくしては、彼の人生は成立しません。
日本で最初に新婚旅行をした人だとも言われています。
MIND; TRAVEL; desire to
(精神:旅;欲する)
これは、有名な精神症状でこの症状を持つレメディはいくつかありますが、
Tub.はその中でもとりわけ重要なレメディの一つです。
ちなみに、彼のお母さんは結核でした。
家族の結核病歴というのも、Tub.を選ぶときの重要ポイントの一つです。
結核が国民病と言われた時代は去りました。
しかし、今もこのレメディを必要とする人はたくさんいます。
生徒さんの中には、このレメディを学んだ際、
「夫はサルファーだと思っていましたが、こちらの方がより近いです。」と
発言した方がおられました。
共通点は、どちらも明るくエネルギッシュで楽天的だと思います。
外気が欲しい人。空腹には弱く、食べ物も高カロリーで濃厚なものを好みます。
あなたの周りに、このような方は、いらっしゃいますか?
人間の病巣部から調整されるレメディ学習を通じて
病というものが人間の歴史やその時代の持つ固有のエネルギーと深く関係して
いるなんて、とてもロマンティックだと思いませんか?
縁の下の力持ち「Graphites (Graph./グラファイト)」
今年は、春が早かったですね。
桜の季節を皆さんはどのように過ごされたのでしょうか?
こんにちは、荻野千恵美です。
私たちは、今、桜の名所と言われている三井寺の近くに住んでいます。
三井寺のすぐそばには、満開の桜の景色で有名な琵琶湖疎水もあります。
今年は、電車で15分ほどの距離の比叡山坂本まで桜を見に行くことにしました。
ここの桜はそれほど知られてはいないので、
三井寺よりもうんと静かに桜を楽しむことができると思ったのです。
比叡山坂本駅で降り日吉大社までの参道を歩きましたが、
それはそれは見事な春の景色でした。
比叡山坂本は、比叡山延暦寺の門前町として栄えたところで、
通りや里坊に見られる石垣の美しいところです。
https://www.hieizansakamoto.jp/ws-anoisizumi.html
この石垣の作り方を「穴太衆積み」といい、
古くから隣町の穴太に住んでいた渡来人の石工技術集団によるものだそうです。
私は、この「石積の町」と言われている坂本が大好きです。
自然石を組み合わせた石垣は長い年月かけて育った苔にやさしくつつまれ、
近くを流れる小川の水は清らかで、比叡山から吹いてくる風も、澄み渡っています。
多くの自然石で積まれているのが特徴ですが、
この石垣を眺めるとき、これらを積んだ名もなき多くの石工たちの、
声や息遣いが聞こえてきそうになります。
汗を流し、心を一つにして、大きなものを作っていく人々の集団がいたのです。
そして、そんな人たちは、今もたくさんいて縁の下の力持ちとして、
まじめに熱心に働いています。
今月は、こういった人たちとイメージと重なるレメディをご紹介したいと思います。
(2019年9月に私のブログに投稿したものです。)
https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12538755297.html
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Graphites (Graph./グラファイト)
原料は、黒鉛。
でも、鉛ではありません。正式名は、石墨。
ダイヤモンド・墨・石炭などと同様、炭素(C)の仲間です。
潤滑性・導電性・耐熱性・耐酸アルカリ性に優れていて、
主な用途は、鉛筆の芯、鉄道のパンタグラフ、自動車のブレーキパッド、
アルミホイル、乾電池の合剤、テレビのブラウン管の塗料など、
多くのものに使われています。
どれもあまり目にとまる存在ではありません。
縁の下の力持ちとしてあらゆる産業の基礎になる分野で活躍しています。
黒鉛を調べようとしたとき、黒鉛を製造する、
「日本黒鉛」という会社のサイトが出てきました。
ここの情報が、一番わかりやすかったです。
会社は、私が住んでいる滋賀県大津市にあるのですが、
とても実直な印象を受けました。
グラファイトらしさは、鉛筆の芯に、とてもよく表現されていると思います。
グラファイトという名前もギリシャ語のGraphein(書く)というのが語源のようです。
なぜ、鉛筆の芯は、書けるのでしょうか?
グラファイトがとても柔らかくはがれやすい物質だということです。
紙の表面は、植物繊維が折り重なってできています。
その繊維の隙間に、柔らかくはがれて、
グラファイトの粉が入り込むことで字がかれるのです。
グラファイトと同じ「炭素」からでいているのに、
分子構造が違うだけで、まったく違った性質を持つものがあります。
ダイヤモンドです。
すべての炭素原子が共有結合しているダイヤは、
縦に、横に強く結びつき、硬くてカチカチ。
一方、グラファイトは、平面的にはしっかり結合しているけれど、
層と層は結合力が弱く、とてもはがれやすいのです。
さて、このような物質を原料にするレメディにマッチしそうな人は?
「なんだか地味で・・・」
「身を粉にして働くイメージ」
「あまり色気がない」
「社会に役立つ人」
生徒さんたちからは、このような意見が出ました。
身体症状で有名なことは、「皮膚症状」です。乾燥したり、
肥厚したりしてひび割れる皮膚。不健康でちょっとした傷にも化膿したり、
治りが遅かったりします。アトピー性皮膚炎的な方も多いです。
皮膚といえばSulph.が有名ですが、Sulph.の人が暑がりなのに対して、
Graph.の人は寒がり。Sulph.の人が甘いものやスパイシーなものを好みますが、
Graph.は甘いものや塩辛いものを好まず刺激の少ないものをほしがります。
食欲旺盛で、空腹で悪化するのも似ています。
また、Graph.の人は、やや肥満気味。
消化器系にも問題を持ちやすく、鼓腸性の消化不良や便秘。
黒鉛は黒または灰色ですが、Graph.も、あまり色気のない人。
男女とも性交を嫌いがちで、男性の勃起不全にもよく適します。
古典的なGraph.のマテリア・メディカでは、シンプルで、あまり
深刻には悩まない人とされています。
地味な黒鉛の原石を思わせるような人かもしれません。
Focus(マテリアメディカ)の精神症状では・・・
IRRESOLITION(決断できない) TIMIDITY(恥ずかしがり)
Lac of self confidence(自信のなさ) Doubts(疑い深い)
という言葉が並びます。
これらの症状に高得点で出てくる共通のレメディは、控えめで自信なさげなタイプです。
加えて、気分の変わりやすさや気難しさを持ち、泣いたり感情表現する人。
見方によっては、Puls.のようでもあります。
しかし、Puls.が泣くのは、人の気を引くためですが、
Graph.はどうしたらいいのかがわからなくて泣きます。
Graph.のような鉱物レメディを理解する場合、元素周期律上では、
どこにいる人なのかという見方をすると理解が深まることがあります。
(専門コース高学年レベルですが・・)
Graph.は、「炭素」です。
「炭素」は、ホメオパシーの周期律表では、第2シリーズの10番目に当たります。
第2シリーズは、出産の過程になぞらえられて考えたりします。
陣痛が始まり、進んでいく中でのちょうど真ん中あたり。
胎児として子宮にとどまることはできないが、出て行く前の戸惑い・・・
そういうレベルにあると受け止めます。
そこから、「自己価値への疑問」というテーマが見えて来ます。
私は、生まれて、この世で生きてゆく価値があるのかどうか?
決断力のなさ、臆病さ、疑い深さ、自信のなさ、
心の変わりやすさの背景にあるのは、「自己価値への疑問」です。
「自己価値への疑問」という感覚は、ダイヤモンド(炭素)にもあります。
硬くて光り輝くダイヤモンドと柔らかくて黒いグラファイト。
レメディになると、こういった特徴は症状に反映します。
しかし、ダイヤを必要とする人は、グラファイトの人とはやはり違って、光った存在感。
でも、ダイヤモンドも「自己価値」について自信がなく、
グラファイト同様、苦しんでいる人です。
グラファイトは、勤勉である点でCalc.(カルク・カルブ)にも似ています。
しかし、Calc.が生活の安定の不安から勤勉であるのに対して、
グラファイトの勤勉さは、自分の価値を守るため、
というところからきているのだと思います。
Falco peregrinus 隼
日差しの明るさに、春の気配を感じるようになりました。
こんにちは。CHK荻野千恵美です。
私たちが京都市内から滋賀県に引っ越してきてから、まもなく4年が経ちます。
私たちが暮らしているのは、JR琵琶湖線、京都から2つ目の「大津」駅の近くです。
京阪石坂線の「びわ湖浜大津」駅にも近いです。
初めて「びわ湖浜大津」の駅に降り立った時、私は、まるで、日本ではない、
どこか外国のリゾート地にでも来たかのような気がしました。
からりと明るい青空の下に広い広い湖面がキラキラ光り、
湖からさわやかな風が絶え間なく吹いてきていました。
「びわ湖浜大津」は、滋賀観光のスポットの1つ「なぎさ公園」の
スタート地点でもあり、ここから、石山駅付近まで4.8kmにわたって、
湖畔の景観を楽しみながら散策できる遊歩道が続きます。
私は、滋賀に住み始めてから「びわ湖浜大津」のすぐそばの
「なぎさ公園」をよく散歩するようになりました。
琵琶湖を周遊する遊覧船が泊まる大津港。
噴水やアートな巨石モニュメントのおかれた広い広い芝生の広場。
広場には、琵琶湖畔を越冬地にする様々な水鳥たち。
1年中広場に遊ぶスズメやハト、セキレイ。
空高く1羽で舞っているトンビ。
遊覧船の会社に飼われている数匹のあひるまで。
様々な鳥たちを観察することとなりました。
群れの結束力の強さ。
雄雌のわかりやすさ。
同じ水鳥でも、陸地で餌を啄むものや、いつも水面にいるもの。
人間に対する敏感さや距離感。
鳥の種類によって様々です。
でも共通しているのは、2本の足で地面を歩くときのおぼつかないような
弱弱しさと、空を飛ぶときの自由で強く美しい姿です。
鳥には、人間には考えられないような自由があります。
風に乗って軽やかに、空高く速く飛ぶ姿は、
地上を歩く能力しかない私には、あこがれの存在です。
今回は、「鳥」のレメディをご紹介したいと思います。
(2016年にブログでもご紹介しました。https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12188854477.html)
<Falco peregrinus 隼>
過日の3年生のレメディの授業では、私は動物のレメディの授業を担当する
ことになりました。
専門コースでの勉強も3年目にもなると、ある程度の動物レメディを学んで
いますので、まずは、それらをすべてホワイトボードに書き出し、
全体から出てくる質感(エネルギー)を味わってもらうところから始めました。
動物レメディといっても、そのレメディの中心となるテーマは、千差万別。
インドのDr.サンカランは、鉱物・植物・動物と、三界に共通するテーマを
明確に表現されていますが、自分たちがクラスで学んだレメディを並べ、
眺め、話し合って味わってみると、Dr.サンカランの示したものとは
また違った言葉が出てきて、理解がより深まりました。
動物は、鉱物や植物と比べると、動くことができ自由度がはるかに高い存在です。
でも、学んできた動物レメディ(Sep.Lach.Tarent.Lac-c.Lac-d.Bufo.等)を
ホワイトボードに書いて、眺めてみると・・・。
生徒さんからは“重たい”といった言葉が出て来たのです。
早く飛べたり、泳げたり、踊ったり、俊敏に動くことができる能力を持った
存在なのに・・・。
動物は、自分を維持するために、常に食べるものを求め、
パートナーを求め、ライバルとの競争にさらされる存在。
動物レメディを必要とする人は、動く自由を持っているのに、その心には、
動く自由のない鉱物や植物レメディにはない、不自由さ、”重たさ”が
あることに気が付きました。
本当に不思議です。
今回学んだのは、ハヤブサのレメディです。
英国のスクールオブホメオパシーのミッシャ・ノーランド先生(故人)が
プルービングされた比較的新しいレメディです。
誕生してまだ、20~30年くらいではないでしょうか。
10年ほど前、ミッシャ先生のセミナーに参加した際に、先生がこのレメディを
プルービングしようと思い立ったいきさつなどを教わり、強い衝撃を受けました。
CHKの授業では、まずは、隼(ハヤブサ)の姿を見てもらいました。
人の拳に乗せることのできる、カラスと同じくらいのサイズですが、
食物連鎖の頂点に立つ猛禽類だけに、美しく凛々しい姿をしています。
正式名は、Falco Peregrinus (Falco-p.)
生息地は世界中に分布しています。
北の方に住むものは、越冬のため温帯や熱帯地方に渡りをします。
Periguriumというのは、「放浪する」という意味を持ちますが、
渡り鳥であることから付けられた名前のようです。
身体は美しく適度な大きさで、高い狩りの能力を持つ隼(ハヤブサ)は、
東洋でも西洋でも紀元前から、鷹狩りの鳥として飼いならされてきました。
ミッシャ先生がプルービングをしてレメディにしたのは、
自然に生きるハヤブサではなく、鷹狩りに利用されてきたハヤブサの羽根です。
日本では、徳川家康が鷹狩りを好んだことでは有名です。
鷹狩りは、ハヤブサを調教するところから、大変な労力と技術が必要なため、
庶民の楽しみではありませんでした。
王侯貴族の嗜み。
支配者が権力を誇示するためのパフォーマンスでもあったようです。
鷹狩りのために調教されるハヤブサは、翼が十分育つまでは、
両足には紐がかけられ、暗い小屋の中で、自由を奪われた環境で育てられます。
餌を自分で取ることはさせず、常に鷹匠の手から与えられます。
餌は、相当な時間与えず、半暗闇の中で、空腹と疲労のため限界まで待ち、
手袋をした拳の上で一口与えます。猛禽でも、飢えさせられた状態になったら、
鷹匠の手袋に足を乗せるようになります。
このようにして、徐々にハヤブサは、給餌されることと、
持ち歩かれることに慣れてきます。調教されたハヤブサは、
自分で捕まえた獲物を食べることはありません。
常に、手袋をはめた拳の上で鷹匠から与えられた餌を食べて生涯を送ります。
そして、手袋をはめた拳を示されると常にそこに戻るようになります。
狩りのとき以外は、足は常にひもでくくられ、
周りの刺激で興奮しないように目隠しの帽子をかぶせられて飼われます。
日本では、昔から、隼人(はやと)という名前の男の子がいますね。
薩摩隼人というところからとった、男の子らしい良い名前だと思います。
隼人というのは、古くは、薩摩・大隅(鹿児島県)に住む人のことを言ったそうです。
最初は大和政権に反抗したようですが、やがては支配下に置かれました。
熊襲(くまそ)と呼ばれていた人たちも同じような立場の人たちでしたが、
こちらは、ずっと反抗的な存在として歴史の記録に登場します。
熊襲とは違い、隼人は、天皇や王子たちの近習としての記述が多いそうです。
なんだか、このレメディのエネルギーに近いものを感じます。
テキストとしてCHKで使っているマテリア・メディカ“FocusMM”には、
このレメディは載っていません。
作者は同じですが、“Synoptic Reference”には登場するので、
授業では、その記述をご紹介しました。
Falco-pのページに出てくる症状は、
ハヤブサの身体的な特徴を表わすものが、いくつもありました。
そして、鷹匠に扱われる存在としての苦しみ。
私は、このレメディは、今までにも授業で取り上げてきました。
でも、今回、私が強く感じたのは、鷹匠に古代から人間に
このような扱いを受けてきた鳥をレメディの原材料とすることを思いついた
ミッシャ先生のホメオパスとしてのセンスでした。
ミッシャ先生のセミナーでのお話では、親からの様々な虐待を受け、
逃げても逃げても、逃げきれなくて苦しんでいる人がいて、
様々なレメディを使っても癒し切れなかった。
いろいろ思い悩むうち、鷹狩りに使われているハヤブサを
レメディにすることを思いついた・・・ということでした。
素晴らしい身体能力と、美しい姿、狩の技術をもったかっこいいハヤブサと、
鷹匠に飼いならされて、不自由なままに生きるハヤブサの存在としての落差。
生徒さん達の反応は、この落差に対するショックが一番でした。
生徒さんからは「こんな人、私のまわりにもいる。あの人かも・・・。」
そんな言葉が漏れました。
自然界に生きる動物の苦しみは、人間のなかにも反映されている。
そして、その苦しみを和らげる術がホメオパシーにはある。
今回の授業では、そんな感動を、生徒さん達の反応から頂いた気がしています。
金のレメディ「Aurum」そして「自然界の声を聴く」
こんにちは、CHKの荻野哲也です。
今月は、私が、レメディについて書いてみます。
先月は、銀のレメディ「Arg-n.(硝酸銀)」のご紹介をしました。
今月は、金のレメディ「Aur.(純粋な金)」のお話をしたいと思います。
その前に、みなさんはホメオパシーのレメディとは、何だと思われますか?
ご存知のように、レメディは、ものすごく薄めてあります。単純に薄めたものではありません。作り方は、100倍に薄める(希釈)ごとに、振盪(摩擦を加えて)して作ります。
金や銀という自然界の物質を原料にして、希釈・振盪を繰り返すと、元々あった自然界のモノは、どう変容するのでしょうか?
そこには、もはやモノはなく、金や銀に内在していた潜在力が、立ち現れて来るのです。
この自然界のモノにどのような潜在力があるのかを確かめるのが、プルービング(人体実験)というものです。
プルービングは、レメディを健康な人たちに含ませることで、人の心身全体に現れて来る感覚や精神/感情症状・身体症状を確かめて、記録してゆくものです。
いわば、もの言わぬ自然界(動物・植物・鉱物)の内なる声を、人間が代弁するようなものです。その声をまとめたものが、レメディの効能書「マテリア・メディカ」です。
私達、ホメオパスは、プルービングを通じて生まれたレメディの不思議な潜在力を感じるにつけ、ホメオパシーという経験科学の持つ魅力に惹かれてしまいます。
このレメディのお話シリーズでは、自然界の声に耳を澄ませて行きます。
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では、金のレメディのお話を始めましょう。
金から作られるレメディは、『Aur オーラム』と呼びます。
金は、太陽のように美しく光り輝く鉱物です。
人類が発見した最古の金属といわれています。
やわらかく加工しやすいため、古代から、さまざまな工芸品や装飾品が作られてきました。展性に優れているため、叩いて薄く延ばせば、1gの金は1平方メートルにも広がります。延性にも優れ、1gが28Kmにもなります。展性・延性いずれも鉱物の中で1番です。
また、耐久性に優れ、空気中または水中では、永久に錆びたり朽ちたりしません。
そして、なんと言っても、採掘量が非常に少ない。
ですから、古代から貴金属として、誰もが欲しがるあこがれの存在でした。
この輝きと希少性のために、富と権力、永遠の価値の象徴として珍重されてきましたが、それゆえに、人間同士の争いの種となり、多くの悲劇も生んできました。
歴史的にも、古代エジプトでは、王以外が使うことを禁じられていたとか。
世界各国で貨幣としても使われてきましたが、庶民が手にすることのできるものではありません。
オリンピックで最高のパフォーマンスができた人に与えられるのは、金メダルです。
日本でも、室町時代は、足利幕府三代将軍、足利義光が建立したのが、金閣寺です。
東北の奥州藤原氏も、三代にわたって繁栄しましたが、そのときに建てられたのは、中尊寺金色堂。
このようなモノを原料とするレメディを必要とする人とは、どのような方でしょうか?
金のレメディには、どのような潜在力があるのでしょうか?
プルービングをしたら、一体、どんな声が聞こえるのでしょうか?
金のレメディAur.の授業のはじめには、モノとしての「金」について、話し合ったり画像を見たりしながら、色々イメージしてゆくことから、始めます。
生徒さんたちは、自由に金のイメージを膨らませます。
ポジティブなイメージでは・・・
強壮・万能・完璧・王様・高貴さ。
地上に届いた太陽。
大切に扱われる。
・・・等など、力強く高貴なイメージです。
ネガティブなイメージでは・・・
孤独。一匹狼。ピークにいる(孤高)。
かまってほしい。愛に飢えている。
自意識が高い。懐疑的。うつ。
高いプライド「どう私を見なさい。」
重要な臓器にトラブルを持つ。
・・・等など、かなり緊張感が出てきました。
現実のAurを必要とする人は、このネガティブな感じに似て、重いものを背負い、とても高いところにいる孤独な人です。
ホメオパシーでは、Aur.の一番の特徴的な症状は、絶望感や憂鬱。そして、自殺傾向です。
例えば、このような特徴的な症状があります。
MIND; SUICIDAL disposition; throwing himself from; height, a
(自殺的傾向:高いところから身を投げる。)
金の人にとって、背負った重みから解放される唯一の手段は、自殺です。
高いところにいる人なので、自殺のスタイルは、高いところからのジャンプです。
Aurは、責任感が強過ぎて良心の呵責や罪の意識を感じやすい人。
名誉心が強く、勤勉で働きすぎ。周りに弱音を吐きません。
限界を超える努力をしているので、批判や反対されることには敏感です。
自分に厳しすぎることからくる、自己非難、自己軽視、見捨てられた孤独感を持ちます。
笑ったり、楽しんだりすることが出来ません。誰ともうちとけず、一人ぼっち。
身体的にも、重い症状を持ちやすいです。
心臓・循環器、肝臓や腎臓、目、骨などに症状が出てきます。
Aurは、責任と関係が深いレメディですが、子孫を残す(生殖)ことも重い責任の一つかもしれません。Aurの人は、生殖器にも親和性をもちます。
また、Aur.は、分類上、もっとも絶望的で深刻、もっとも病の深いマヤズムに属します。
黄金に光り輝く、人々の憧れのモノがレメディになった時、暗く深刻で絶望的な症状を持つ人を癒やすものになる・・・なんて不思議でしょうか。
もし、あなたか、周りの誰かが責任を重く感じすぎて、心身の不調に悩んだりして、行き詰まっていたら、このAur.のことを思い出して下さい。
ではまた
ARGENTUM NITRICUM Arg-n. アージニット 硝酸銀
明けましておめでとうございます。みなさんは、どのようなお正月を過ごされましたか?
CHKの荻野千恵美です。
我が家のお正月は、独立して出ていった子供たちや孫たちが帰省し、久しぶりに家族がそろう時間となりました。初詣には、元旦には徒歩で行ける三井寺に、2日には、これも電車ですぐの石山寺に、皆でお参りしました。帰り道にある甘味処「茶丈藤村」では、瀬田川を眺めゆっくり出来ました。
正月も三ヶ日が過ぎ、再び、夫婦二人に戻ったとき、あらためて今年は新たなメッセージをお送り出来たら・・・などと話し合いました。
アイデアの一つとして出てきたのが、CHKサイトの「レメディの使い方ABC」の第二弾をスタートするのはどうかということでした。
「レメディの使い方ABC」は、15年前に京都に来たばかりの私たちが楽しんだ京都のあれこれと始まったばかりのCHKの学校生活、そして「基本講座」に登場するレメディ達を3年かけてご紹介しました。
第二弾は、今、私たちが住んでいる滋賀ライフのつれづれと、専門コースで勉強しているレメディ達をご紹介していきたいなと考えています。
まずは、去年の11月、1年次で勉強したレメディについて、ご紹介していきたいと思います。
2022年度CHK国際セミナー『ホメオパシーの4原則』終了しました!
2022年度のCHK国際セミナー/ジェレミー・シェア先生によるWeb特別講義は、無事終了しました!
講義内容は、フィロソフィー・マテリアメディカ(レメディ)・プルービング・レパートライズ・ケース学習と多岐に渡ったものでしたが、講義全体を『ホメオパシーの4つの原則(全体性・個別性・類似性・最少投与)』で貫く明快な内容でした。
実際に、この10年以上、タンザニアで、ジェレミー先生たちがエイズ患者さんたちに関わる中で、その困難を乗り越える原動力になったのは、この4つの原則に則った実践をして来られたからだと理解することが出来ました。
3日間の講義を通じて、参加者全員が、深い感銘を受けたことが伝わって来る素晴らしい講義でした。
2018年春から、ジェレミー先生が、世界中で展開しておられる「ダイナミススクール(ジャパン)」が京都で、開催されることになり、私たちCHKの専門講師3人もこの3年半、「ダイナミススクール(ジャパン)」で学び、今年2022年初めにようやく卒業しました。私たちは、その学びから多くのものを得ることが出来ました。同時に内容の素晴らしさに感動してきました。特に、2020年の年明け以来のCovid19(パンデミック)に対するジェレミー先生の向き合い方や実際の対応には大いに触発されました。専門コースの授業では、都度その感動をみなさんにもシェアしてきました。
2019年7月授業報告(1年生)
●7月27日(土)28日(日)
今月は「先月のレメディの復習(Nat-m.Ign.Sep.)」「オルガノン学習(§26~34)」「今月のレメディ学習(Puls.Phos.Calc.)」「ホメオパシー哲学(類似性・SRP・シングルレメディについて等)」を学びました。
「今月のレメディ学習(Puls.Phos.Calc.)」
今月からは、事前学習として、各レメディの原材料を調べて来てもらいました。レメディの原材料を知ることは、そのレメディの本質的な理解にとても役立ちます。CHKでは、数年前から、全学年でレメディ学習の時には必ず事前に調べて来てもらっています。
6月授業報告(2年生)
今月は、「5月のレメディの復習(Anac.Ferr.Lac-c.)」「オルガノン学習(§100~109)」「今月のレメディ学習(Lac-d.Lil-t.Verat.)」「古典的ケース学習(レパートリーに慣れる)」を学びました。(画像は、ユリ科の2つのレメディ原料:タイガーリリーとバイケイソウ)
「今月のレメディ学習(Lil-t.Verat.Lac-d.)」
Lil-t.は、タイガーリリー(鬼百合)から調整されるレメディです。授業の初めに生徒さんに事前に調べて来てもらった原材料情報を発表してもらいました。
このレメディの精神症状は、ユリ的な宗教性・罪悪感とトラ的な野生性やパッションの間での葛藤が特徴的です。その葛藤から逃れるためにいつも急いで、一度にたくさんのことをしようとします。自分の重要性を強く言い立てることもあります。ユリ科のレメディの共通項は、世間から押し出されて見捨てられたような感覚を持っていることです。