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『Helleborus niger.』

こんにちは、CHK荻野千恵美です。

今年は、12月21日が冬至になりました。

冬至は、北半球において、日の出から日の入りまでの時間が1年中で最も短い日です。
また、二十四節季の1つで、太陰太陽暦では「一年の起点」となる日とされています。
一年で一番暗い日でもありますが、
「一陽来復」といって「陰が極まった後に陽が返ってくる。」という
おめでたい日であるとも考えられてきたそうです。

今は、一番暗いけれど、これからは、一日一日と明るくなっていく。

私のお気に入りの散歩スポットである、大津琵琶湖疎水の桜並木も、
1枚残らず葉を落としました。
今の桜は、冷たい空にまだまだ小ぶりな枝を突き立てていますが、
春の開花に向けて、輝いていきそうな気配を感じます。

太陽の光が一番弱い季節を過ごすための古くからの人間の知恵でしょうか。
この季節、私たちには、一番明るくにぎやかな行事が待っています。

クリスマスにお正月。
離れていた家族が帰省し、共に集い、食べたり飲んだり。
子供達は、クリスマスにはサンタさんからプレゼントを受け取り、
お正月には両親や祖父母からお年玉をもらえる。
一番うれしい時でもあります。

CHK専門コースの年末の最後の授業の日、
一人の生徒さんが、ご自宅で育てている「セイヨウヒイラギ」をたくさん
持ってきてくれました。

ヨーロッパでは、魔よけとしてクリスマスの装飾として使われているようです。
ヒイラギの棘は、キリストの受難を、真っ赤な実は、キリストの血を表します。
暗くて寒い季節の、生命力にあふれる緑の葉と元気いっぱいの赤い実。
クラスの皆さんは、分け合って少しづつもち帰って行かれました。

今月は、今の季節ならではのレメディをご紹介したいと思います。


『Helleborus niger. (Hell.ヘレボラス/クリスマスローズ)』

ヨーロッパの山岳地帯原産。
一年中で、太陽の出ている時間が一番短くなるクリスマスのころに花を咲かせるため、
クリスマスローズと呼ばれるようになったそうです。

キリストにまつわる逸話もあります。

イエスが生まれた時、一人の貧しい羊飼いの少女がお祝いに駆けつけましたが、
贈り物がありません。嘆き悲しみ、涙がこぼれおちた地面から咲いた真っ白い花が、
クリスマスローズだそうです。少女は、その花を持ってお祝いに行きました。

日本では、寒い時期に咲くので「寒芍薬」「初雪おこし」という名がついています。
最近では「冬の貴婦人」とも称されていますが、直射日光には弱いので、日陰の庭の
ガーデニング素材として人気です。

雪の降る寒い季節に咲く可憐な花ですが、毒性もあります。
Helleborousとは、ギリシャ語で殺す植物という意味があります。
特に、真っ黒い根茎に毒性が多く含まれます。
レメディの原料となるのも、冬季に採取した根茎を使います。
もちろんレメディは極限まで薄めていますから毒性はありません。

Helleborus niger.のniger は、黒いという意味ですが、「黒い」「暗い」が、Hell.の
病像の中心で、日照時間が一年でもっとも短く、世界が暗くなる時期に咲く花を原料に
したレメディらしいところです。

クリスマスローズは、別名 Black helleboreといいます。

また、このレメディは、略語でHell.と表記しますが、
HELLには、地獄という意味があり、
blackとは、まさにこのレメディの症状像の中心テーマです。

生命力が低く、重篤な病気で、患者の周辺が暗く見える状態です。

マテリアメディカ“Focus”の全身症状にも、
暗く、浅黒いレメディ:黒ずんだ顔、すすけた鼻孔、黒ずんだ唇、手。
という一行があります。どこか暗い陰鬱な面のあるレメディです。

古典的なマテリアメディカ「Allen’s keynote」には、
腸チフスの後に使うレメディとあります。
腸チフスは、今では、聞かなくなった病気ですが、日本でも、昭和初期から
終戦直後ころまでは、年間4万人もかかったそうです。
保菌者や発症した患者の便や尿に汚染された水や食物から感染していきます。

チフスは、高熱が1週間から2週間も続くのが特徴的で、
体力を消耗し、無気力な表情(チフス顔貌)となっていきます。

チフスに罹ったときの高熱による昏睡状態を、
ギリシャの医聖ヒポクラテスが、
「ぼんやりした、煙がかかった」を意味する
ギリシャ語Thpusと書き表したのが病名の由来です。

ホメオパシーの全盛期、ケント博士の時代には、
脳の炎症の後、ぼーっとして、記憶力が弱く、不活発で、
無力な状態にこのレメディがよく使われたようです。

このレメディの一番の特徴は、感覚器官の鈍さです。
このレメディはハーネマンがプルービングしましたが、彼は、
「目が悪いわけではないのに、見えていない。
耳が、悪いわけではないのに、聞こえていない。
味覚器官が悪いわけではないのに、味がわからない。」と、書き残しています。

感覚器官は、正常だが、脳が侵されたために起きる感覚器官の鈍さです。

ぼーっとして、無関心、思考も行動も遅く、鈍い、忘れっぽく、
何も覚えられない、頭が空っぽで、周囲の状況を理解できない無力感。

このような状態は、頭部外傷からも、起きることがあります。
以下の症状でも有名です。
HEAD; INJURIES of the head, after  (頭の怪我以来の不調)

人間にとって、最も重要な頭部の外傷や、
チフスのような激しい感染症によって、全身、高熱で苦しむうち、
「脳」という中枢部分が侵されていくというのは、最悪の状態です。
Helleborus niger.の略語Hell.というのは地獄。

身体の問題だけでなく、精神的にも、ぞっとするような状況の下で、
外側の世界をシャット・アウトしてしまったというのが、Hell.の無感覚と言えます。

現実が厳しすぎて、引きこもり、無感覚になるという点では、Op.(オピウム)にも似ています。
Op.は、現実の厳しさに絶望して、阿片屈に引きこもり、無感覚になるイメージです。

また、Hell.は、Staph.(スタフィサグリア) 
Acon(アコナイト)Puls.(プルサティラ)など
非常に敏感なレメディグループのキンポウゲ科に属します。
敏感なキンポウゲ科に属しながら、
Hell.は、他とは真逆の「鈍感さ」「ぼーっとした。」という感覚をもつレメディです。

世界は、今を底に、これから次第に、明るくなって行きます。
今年も私のつたないメルマガを読んで頂き、ありがとうございました。
では、みなさん、良いお年をお迎えください。