レメディの使い方ABC
カリ・ビック Kali-bi.
2010-12-07
こんにちは、クラシカルホメオパシー京都の荻野千恵美です。
今年は、例年になく、紅葉がみごとでした。
京都は、11月中は、名所ごとに、ライトアップをしていたり、あちこちのお寺で、ふだんは見ることのできない文化財の特別公開があったりと、大変なにぎわいでした。
今月に入って、やっとふだんの静けさを取り戻しつつあります。
京都国立美術館では、日本を代表する女流画家上村松園展があり、私は、始まってすぐのころに見に行きました。
もともと、私自身、上村松園の作品には、あまりなじみがありませんでした。でも、もうずいぶん前、ふと目にしたエッセイの中に上村松園について触れられた一文があって、そのエッセイについては、何の記憶も残っていないのですが、「上村松園」という人だけが、なぜか心に焼き付いていました。
そのエッセイの中に、筆者が初めて松園の家を訪れた日の事が書いてありました。玄関に足を踏み入れたとたん、厳しいほどに清潔に履き清められ、磨き上げられた空間に圧倒されたというようなことだったと思います。そして、先日展覧会に出向き、彼女の作品の前に立った時、かつて読んだエッセイの印象が、そのままよみがえってくるのを感じました。
上村松園は、明治9年、京都四条御幸町の葉茶屋を営む家に生まれました。ちょうど、樋口一葉と同じころの人だそうです。
当時は、客が、店でお茶を試飲して、お茶の葉を買っていたようで、そういった人たちの姿を熱心に写生する女の子でした。
その絵の上手なのに驚いた人が、画集をくれたり、アドバイスをしてくれたりして、画学校に進むことになります。
大変勉強熱心な学生だったようですが、当時はまだまだ女性が仕事をして自立的に生きて行くことなど、なかなか許されなかった時代。また、画家というような職業で生きて行くということも現代とは比べようもなく厳しかった時代です。
展示されていた作品は、すべて女性を描いたものばかりでしたが、そこに登場する美しい女性の姿に共通して感じられるものは、研ぎあげられたような、磨き抜かれたような品格でした。決して、頑強、強壮というわけではないのですが、けっしてへこたれない、芯のしっかりした、しなやかな強さ。
晩年、松園は、自分の作品について、「見ているだけで、その人の邪な心が、洗い流され、清められるような絵を描きたい。」と言っていたそうです。私自身も、確かに彼女の展覧会に行き、そんな気持ちになりました。
「背筋をしっかり伸ばして、歩いて行きなさい。日々の仕事を、きちんと丁寧にするのですよ。」と言われたような、やさしく、励まされたような思いでした。
彼女の写真も数点展示されていましたが、やせ形で、けっして頑健なふうには見えませんでした。でも、なにか一つの事を貫き通す強さのようなものを感じさせる人でした。
花鳥風月や風景など、様々な題材を求めて、描くのではなく、女性の美しさだけに焦点を当てて、技術的に、精神的に精進していくような画家だったようです。
ひょっとして、彼女は寒がりではなかったかしら。
汗かきで、よくのどが渇いて、髪や爪は弱くて、風邪を引きやすく、牛乳などは飲めない人ではなかったかしら?
なんて、ついつい思ってしまいました。
繊細、上品、純粋、頑固、几帳面。
長い時間をかけて、不純物を排除し、透明で美しい六角柱の結晶をつくる水晶のイメージが、彼女のイメージと重なりました。
題材も、王侯貴族や権力者ばかりを描いたのではなく、傑作と言われているものには、市井の人の、なにげない日常の一瞬を絵画の世界に永遠に結晶化させたようなものが多いようです。
水晶を原料にするレメディであるシリカは、鉱物のレメディの中でも、貴金属を原料とする人ではなく地球の地殻を構成するありふれたものですから、貴族的であるよりは、庶民的なイメージです。
彼女のレメディはともかく、秋の日のひととき。名画の世界に浸るのは、とても素敵なひと時でした。
それでは、始めましょう。
「セルフケアコース7 特に女性に関係したレメディ」 その5
<カリ・ビック Kali-bic.>
原料は、重クロム酸カリウム。
工業分野で広く使われており、コンクリートの原料の一つでもあります。
毒性は強く、摂取すると、まず多量の分泌物を伴う炎症が起きます。
そして、その後、穴あけ器でくり抜いたようなはっきりした縁を持つ深い潰瘍性の病変ができます。
このレメディは、カリウムとクロミウムの化合物を原料としますが、ホメオパシーのレメディには、カリウム系の化合物を原料とするものが、他にもいくつかあります。
なかでも、Kali-br.(臭化カリウム)Kali-c.(炭酸カリウム)Kali-sulph.(硫化カリウム)Kali-i.(ヨウ化カリウム)などは、よく知られています。
野菜や果実を育てるときに必要とされる三大肥料は、窒素(N)リン(P)カリウム(K)です。
その中でも、実や花を立派に育てたいときは、リンを多めに与え、葉の野菜などを育てるときは、窒素を、根っこの野菜などの時は、カリウムをしっかり与えるのだそうです。
「根っこ」をしっかり育てるときに必要とされるカリウム系レメディがマッチする人に共通するのは、地道で、保守的で、規則正しいというところ。
マテリアメディカ(薬効書)には、〝Doun to earth.“(地に足がついた)と表現されています。
地面に、根をしっかり張ったような生き方をします。
地域に根ざし、仕事での実績を積み、家族を守り、安定した人生を送ることを望む人。
カリ・ビックは、重クロム酸カリウムですから、カリウムだけでなく、クロムの側面も持っています。
クロムは、光沢があり、固く、耐食性があることから、クロムメッキとして幅広く利用されています。
ですから、カリ・ビックの人は地面にしっかり根を張るカリウムのイメージとともに、家の中などを、きれいに磨いてピカピカにしておきたいような几帳面さを持った人です。
家族と一緒にいることを好み、生活を規則通りに、決まった時間に決まったことをしたい人。
自分の知っている範囲で生活したい。
白黒はっきりさせたがる。
トラブルはさけたい。
すべて型どおりに行おうとするので、支配的で狭量になってしまうところがあります。
身体面では、とても寒がり。
午前2時~5時の悪化。
痛みは突然現れ、また突然消えることが多いようです。
痛みの部位は、とても小さい面積で現れます。
分泌物は、濃厚で糸を引き、黄色または白色です。
セルフケアでは、鼻の炎症。副鼻腔炎のときなどに選択肢の1つとされるレメディです。