レメディの使い方ABC
化膿系レメディ:マーキュリー Merc.
2010-09-13
こんにちは、クラシカルホメオパシー京都、荻野千恵美です。
8月25日、朝日新聞の一面に日本学術会議のホメオパシーに対する否定的な見解が掲載されました。それ以来、代替療法の中でもとりわけマイナーなホメオパシーがマスコミをにぎわせているようです。
セルフケアの講座に通っている、子育て中のお母さんたちの中には、夫から、「子供に、ホメオパシーを使っているようだが、大丈夫なのか?」と言われたという方もいます。
でも、自分の頭で、自分や自分の家族の健康について足元からきちんと考えようとしている人は、今回の騒動をとても冷静にとらえておられるように見えます。
高校生の娘さんがいらっしゃる方から、「娘が、朝日新聞の報道の仕方は一方的で偏っていると言ってました。」という話を聞いたりもしました。
新生児にビタミンK2を飲ませる代わりにホメオパシーのレメディを使うという行為は、ホメオパシーの基本を学んだ方なら、だれでもおかしいと思うでしょう。ただ薄めたものが、自動的にレメディになるはずはありません。これをレメディと呼ぶ方はホメオパシーについて、もっと学んでから発言して頂きたいと思います。
また、朝日新聞のホメオパシー否定論は、公正であるべき立場のものとは思えません。
その一方で、私たちも産経新聞の取材を受けました。
東京から来られた女性記者の方には、8月28日大阪中之島中央公会堂で、私たちが開催している「超初心者向け入門セミナー」に参加して頂き、ホメオパシーとは何かについて学んで頂きました。
彼女は、「公正な立場で記事は書いていきたいと思います。」と何度も言われました。
9月9日に(東日本だけでしたが)掲載された記事は、ホメオパシーに対する否定論・肯定論両方の見解が明確に記してあり、私たちにも十分納得できる内容でした。
この一連の騒ぎは、一時的には私たちの活動にとって向かい風となりそうです。
しかし、この機会に、患者にとっての今の医療のありかたや、マイナーな世界であるがゆえに、知られていないホメオパシー界で起きていることについて、社会からの視線が当たり、公の場で、議論されるのはとても良いことだと思っています。
来月は、いよいよCHKのメインイベントの1つ、国際セミナーです。
昨年に引き続き、オーストリアから二人の先生をお招きし、「続:元素のレメディ~周期律表を解き明かす」というテーマで講義をしていただきます。数年前にオーストリアで調査された統計では、国民の95%以上が、自分や家族がホメオパシーを利用したことがあるとのことです。日本と欧州では温度差がありますね。
今年は、3学年そろい、より一層賑やかになったホメオパス養成コースの生徒さんを前に先生方は再会を喜んで下さると思います。
昨年以上に、熱気あふれる三日間となりそうです。
それでは、始めましょう。
「セルフケアコース6 特に女性に関係したレメディ」その3
<マーキュリー Merc.>
原料は、水銀です。
ハーネマンが作ったレメディで、彼は自分の体でプルービングを行ったそうです。
当時は、水銀は梅毒の治療によく使われていました。しかし、毒性が強く、患者が苦しんでいたため、彼は、水銀について様々研究もし、出来るだけ、患者が苦しむことのないものを独自に研究開発(ハーネマンの水銀)し、その後レメディとしても、着目したのでした。
ハーネマンは、サルファーを男性的なレメディ、一方マーキュリーを女性的なレメディとしています。
原料を硫黄とするサルファーの人は、地球の中心で煮えたぎるエネルギッシュなマグマのイメージです。
地表の割れ目から、すざまじい勢いで、吹きあげます。
明るく、力強く、自我を主張する男性性を感じるレメディです。
では、なぜマーキュリーが女性的なのでしょうか?
多くの金属が個体として存在するのに、なぜか水銀は常温では液体です。
そして、温度が上がると気化してしまいます。
なんだか、不安定な存在。変幻自在な感じもします。
こういったところに、ハーネマンは女性性を感じたのでしょうか。
子供のころはやっていた山男の歌に、「娘さんには、惚れるなよ~娘心は、よ~お~山の天気よ~」なんて言うのがありました。
変わりやすさというのは、女性の特徴の1つかもしれません。
年頃になって急に美しくなるのも、年齢とともに美しさを失っていくのも、昔から女性の宿命の1つです。
また、生理の始り、妊娠、出産、授乳、更年期と目まぐるしい肉体の変化を経験するのも女性です。
2~3年前、大阪中之島の東洋陶磁美術館に行くことがありました。
水銀を含む、「辰砂」という鉱物を染料に使った焼き物が、たくさん展示されていました。
とてもエレガントな赤い色に思わず、引きこまれてしまいました。
辰砂を染料にした、焼き物はいろいろあるようですが、人の心を魅了する赤い色をしています。
水銀は毒性が強いため、近年ではずいぶん使用が控えられるようになりましたが、かつてはマーキュロクロム液として日本中の子供たちの膝っ小僧を赤く染めていました。
私は子供のころ、あのどぎつい赤色に何か安心を感じていたような気がします。
今、平城京遷都1300年ということで奈良のことがよく紹介されています。
奈良時代を代表する歌に
あおによし 奈良の都は 咲く花の
匂うがごとく 今 盛りなり
というのがあります。
奈良の枕詞の「あおによし」は、 「青丹よし」だという説が有力だそうです。
青は銅を原料とする緑、丹は水銀を原料とする朱色。
寺院建築に鮮やかな朱や青が使われるようになったのは、奈良時代からで、当時は、斬新なデザインだったようです。
奈良時代には大仏も作られましたが、ここでもまた水銀が登場します。
表面には金箔がほどこされていますが、これは金粉と水銀を混ぜたものを塗りつけたものです。
金粉とともに塗りつけられた水銀は、その後暖められ気化し、金だけが仏さまの表面を守ることになりました。
当時、この作業をした多くの人たちは水銀を吸って、大変な健康被害にあったのだろうと言われています。
辰砂は、鮮血の色をしているということで、古代から権力者達に珍重された不老長寿の薬でもありました。
結果は、その毒性によって寿命を縮めることになるのですが・・・。
特に、愛用したことで有名なのが、秦の始皇帝。
彼は、中国で初めて中央集権国家を作った革命家でもありました。
そして、彼の作った国は、彼の死後すぐに滅びました。
独裁者として、常に自分の身の安全、国家の安全に脅かされつつ生きていた人だったと思います。
マーキュリーにマッチする人の精神状態の中心は、「不安定 INSTABILITY」です。
有名な精神症状に、
妄想:まわりを敵に囲まれている。というのがあります。
落ち着きがなく、疑い深い人。
夜や、一人でいることを恐れます。
また、自分の不安定感を解消したいため、保守的で、秩序を求める人であることもあります。
社会を乱す人を憎んだり、不正が許せなかったり。
そうかと思うと、平凡な日常が我慢できず、不平不満でいっぱいだったりもします。
法と秩序を求める気持ちと、自分の中にある暴力的な衝動との間の葛藤に苦しんだり。
こういった精神のパターンは、身体的には、「どもる」という症状で表現されることがあります。
敏感な人で、暑さにも寒さにも耐えられません。
発汗も多く、汗は臭いがきつかったり、寝ているときシーツを黄ばませてしまうこともあります。
唾液が多く、またこれも、臭ったりもします。
腺は腫れやすく、粘膜の潰瘍とも関係の深いレメディです。
古くから、体質レメディとして使われてきましたが、セルフケアにも大変有用なレメディです。
口内炎や歯肉炎で、痛くて唾液が多く出るとき。
おたふくかぜで、耳下腺が腫れ痛むとき。
急性の炎症や、化膿で苦しいときに選択肢の1つとして良いと思います。