レメディの使い方ABC

コキュルス Cocc.

2010-05-17

こんにちは、クラシカルホメオパシー京都の荻野千恵美です。

4月の最後の週末は、専門コースの1・2年生の授業でした。
ホメオパスを目指して入学された新1年生の方たちにとっては、入学の日。
新しい仲間とともに、まっさらの銀色の本と赤い本のページを、初めてめくる日でもありました。

銀色の本は、“The New Synoptic One”Frans Vermeulen 著
「シルバーブック」という名で親しまれている本です。
ホメオパシーの学校をしている著者が、生徒たちのための参考書として、わかり易く簡潔にまとめてくれたとても基本的なマテリアメディカ(薬効書)です。

赤い本は“SYNTHESIS” レメディの検索辞書です。

私たちの学校は、今年で3年目。
私自身も、期待と不安を抱えながら、これからこの2冊の本に取り掛かろうとする生徒さんたちの前に立つのが、3回目となりました。
でも、なぜか今回が一番緊張してしまいました。

授業では、レメディを3つ学びました。
ナット・ムール(Nat-m.) フォスフォラス(Phos.) ライコポディウム(Lyc.)

ナット・ムールは岩塩や海水を原料とするレメディです。
今回は、私もプロジェクターを使いました。
まず、数種類の岩塩の写真を見ました。
その後、部屋を暗くして、5分ほど、海の映像をひたすら見ました。
海岸。砂浜。岩に打ち付ける波。永久の時間の中で、繰り返し繰り返し、寄せては引いていく波。
映像をみながら、心に浮かんだイメージを一人一人に、発表してもらい、その言葉を、ホワイトボードに書き集め、まとめてみました。
そして、その後、マテリアメディカのナット・ムールのページをめくると・・・。
自分たちの口から出た言葉が、そのまま記されていました。

これは、決して摩訶不思議なことではありません。
マテリアメディカの記述は、プルービング情報がもとになっています。
ナット・ムールのページに書かれていることは、岩塩から作ったレメディを飲んだ人に起きたことを集め、まとめた情報がもとになっているのですから。
映像からでも近いことが起きるのだと考えられます。

フォスフォラスは、燐(リン)を原料とするレメディです。
燐は、花火の原料に使われる物質です。
そして、花火は、燐の人のイメージと重なるといわれています。
まずは、花火の映像を5分間ほど見ました。
漆黒の夏の夜空いっぱいに広がる、華やかな光と音。
でも、そのつかの間の時間が終わった後の、たとえようのない寂しさ。
生徒さんたちの言葉から、フォスフォラスの人の「交流」と「引きこもり」という極性が浮かび上がったのには、驚きました。

ライコポディウムは、スギゴケを原料とします。
小さな鉢植えのスギゴケを、まずは見てもらいました。
この植物は、いけばなでは、足元をかくすのに使われるのだそうです。
でも、こんなちっぽけな植物も、遠い昔、石炭紀には、天をつく大木だったそうです。
進化の過程で、身を小さくして生き残ってきた植物です。
石炭紀にそびえたっていた姿の写真はありませんが、研究者が描いた想像図の映像を見てもらいました。
ここでも、やはり、このレメディにマッチする人の人物像がみごとに生徒さんたちの言葉から出てきました。

こういった勉強法は、レメディ学習のもっとも初歩的なアプローチの仕方です。
でも、なぜ、こんなに時間のかかるやりかたをするのでしょうか?

クラシカルホメオパシーでは、ホメオパスは、そのときの、その人の全体像に最も近い、ただ1つのレメディを探します。
いくつかのレメディの候補から、ただ1つを選ぶのは、なかなかむずかしいものです。
そして、そのときに、必要とされるのが、右脳的な、みずみずしい感性。
人のエネルギーと、レメディのエネルギの類似性を探していく仕事は、そういった感性を育て、磨いていく必要があるのです。

月がかわり、ゴールデンウイークに入ると、すっかり緊張が抜けてしまいました。

新緑の京都の庭を楽しむ日も持つことができましたが、その後、心身ともに緩みきったのでしょうか。風邪を引いてしまいました。

でも、新しい素敵なランチと散策のお気に入りのコースができました。
また、ご紹介したいと思っています。

それでは、始めましょう。

「セルフケアコース 神経・感情から起きる不調に適するレメディ」その7

<コキュルス Cocc.>

原料は、ツズラフジ科のつる性植物。
一般名は、インディアン・コクル。フィッシュベリー。
インドやスリランカの沿岸部に生育しています。

地元の漁師は、昔、この実を漁に使いました。
川にこの実を投げ、それを魚が食べると魚は身体が麻痺してしまいます。
動けなくなり、おぼれ死んだ魚を漁師たちは集めたそうです。

また、この実をビールに混ぜ、アルコール度を強くみせるのに使われたこともあったようです。この実には、足のもつれや、支離滅裂な話し方など、人を酔っ払い状態にする特性があります。

コキュルスの実には、ピクロトキシンという毒性が含まれていて、人の中枢神経を混乱させます。
この毒性におかされると、鈍くぼんやりとした弱弱しい感じになって、めまいがしたり、時間の過ぎるのがすごく速く感じたりすることがあります。
また、一方では、過敏になり、眠れなかったり、匂いに耐えられなくなって、吐き気をおこしたりします。

コキュルスを必要とするのは、このような毒性によって、中枢神経が乱れてしまったような状態になっている人です。

コキュルスは、「看病疲れのレメディ」として有名です。

睡眠のペース。食事のペース。
穏やかで、リズミカルなペースを守り、規則正しく暮らせるのが、身体にも心にも優しい生活です。
でも、いつもそういったペースを保って暮らせるとは限りません。
人を看病するときは、自分のペースを、とりあえずは後回しにしなくてはなりません。
夜中何度も起きたり、自分の食事のことなど、いっていられないことも起きてきます。
なにより、心配によるすごいストレスにさらされます。
このようなときに起こるさまざまな不調を和らげてくれるレメディです。

また、「乗り物酔い」のときに、候補となるレメディでもあります。
スピードの速い乗り物ほど、心身にかかる負担は大きいのではないでしょうか?
時差ぼけなどは、自分の時刻と、現実の時刻とのギャップに、混乱してしまっている状態です。時間的に、自分のペースを乱された感じ。
車や電車の移動にしても、人間本来の自然のスピードではないものに対する、感覚器官の混乱のようにもみえます。
ですから、感覚器官のするどい子供のほうが、乗り物酔いには弱いのかもしれません。

「二日酔い」や「吐き気」のときにも、候補になるレメディです。

コキュルスが、マッチするときの身体的な症状は、のどのかわき、唾液の増加、口内が苦く感じられるなどが、特徴的です。