レメディの使い方ABC

咳:アント・タルト Ant-t.(アンチモタート)

2009-09-22

こんにちは、荻野千恵美です。

クラシカルホメオパシー京都では、3年制コースの授業を、来年から、岡崎にある「京都市国際交流会館」で行うことになりました。

ここは、東山の麓。
南禅寺や永観堂、平安神宮など見所の多い景勝地の一角にあります。

先日、そのすぐそばにある明治の元勲山形有朋の別荘だった「無鄰庵」を訪ねてみました。
あまり知られていませんが、すばらしい日本庭園を楽しめるところです。

東山山麓を借景にし、なだらかな傾斜地をうまく利用して作られています。
琵琶湖疎水を引きこみ、三段の滝や小川をつくり、流れこんできた水でできた池が、中心となっている、池泉回遊式庭園。
平安神宮などを作った明治時代を代表する庭師の小川治平が、設計したことでも有名です。
よく手入れされた芝生に緑豊かな木々が植えられた、この広大な敷地に、二階建ての母屋、茶室、洋館が美しく配置されています。

日露戦争前夜、この洋館で、山県有朋、伊藤博文、桂太郎、小村寿太郎の四人が会議をし、当時は、「無隣庵会議」といわれ新聞をにぎわしたということです。
会議がおこなわれた2階の部屋の壁は、金箔で塗られ狩野派のみごとな花鳥風月が描かれています。

山形有朋は、忙しい公務の合間を縫って、よくここにやってきていたそうです。
つかの間の静寂を、楽しんでいたのでしょう。
母屋では、誰でも、抹茶とお菓子を頂くことができます。
私も、母屋のお庭が一番美しく眺められる場所にすわり、当時と変わらず、ずっと流れている小川と、木々の表情に季節を感じながらゆっくりお茶を頂きました。
口に含んだ抹茶の苦味に、心と身体が、すっきりと清められたような気分でした。

それでは、始めましょう。

「セルフケアコース 風邪のレメディ」その8

<アント・タルト Ant-t.>(アンチモタート)
原料は、吐酒石です。
吐酒石は、嘔吐剤として使われてきました。
砒素と同様、昔は殺人にもよく使われたようです。

風邪が長引いて、炎症が肺や気管支にまで広がってしまったとき。
胸が、粘液でいっぱいになり、ガラガラ音がする。
衰弱してしまって、力強く咳き込んで吐き出す力がなく、吐きたくても吐けない。
このようなときに良いレメディです。

顔は青ざめ、目は落ち込み、冷たい汗をかきます。
だるくて、不機嫌で、眠けが強いです。
子供なら、見られることも触られることも嫌がります。
抱っこも、垂直にしてささえるようにしてもらうことを求めます。
胃腸も弱り、酸っぱいものや、りんごを欲しがります。

つわりの時、吐き気とともに、だるさや、眠けをより強く訴える人は多いようですが、妊娠初期のころは、赤ちゃんを受け入れるのにすごいエネルギーがいるからかもしれません。
アント・タルトは、このようなときにも良いレメディとなります。

現代医学では、「咳止め薬」というものがあります。
そのためか、私たちの常識も「咳」という言葉で、症状を一つにくくり付けてしまっているような気がします。

でも、「咳」といっても、さまざまです。
ホメオパシーでは、咳で苦しむ「その人の全体」にマッチしていないとなかなか効果は得られません。

そして、「その人の全体」にマッチしていれば、「咳」だけでなく「嘔吐」に対しても使えるのがホメオパシーの面白いところです。

咳も嘔吐も、何かを排出しようとする、身体の自然な働きなのですから、あたりまえかもしれません。
「咳」が、何かを排出しようとする身体の自然の働きであるならば、「咳止め薬」によって、押さえ込むのは、よいことではないのでしょう。

私は、子供たちが小さかった頃、咳き込む姿を見るのがいやでした。
夜中に咳をする音を聞くことに耐えられませんでした。
自分なら、けっこう平気で咳をしているのに。
夜中に、咳をしているからといって、わざわざ寝ている子供を起こして、薬を飲ませたこともありました。
もっと、ゆったり、みていてやればよかったなあ・・・・今になれば、そう思います。

咳は、出る必要のある間は、出ます。
そして、必ず終息していくものです。
今やっと、そう考えられるようになりました。

次回は、イペカックを、「咳」という観点からご紹介していきたいと思います。