今月のレメディ
『Spongia tosta (Spong.)』海のレメディ・咳のレメディ
こんにちは、CHK荻野千恵美です。
まだまだ厳しい夏の暑さが続いていますが、京都では夏の行事「五山の送り火」が終わってしまいました。
「五山の送り火」は、毎年8月16日の夜。
お盆をしめくくる伝統行事です。
迎え火によって現世にお迎えした祖霊(お精霊さん)を再び浄土(死後の世界)に
送るという意味があります。
17年前、CHKの立ち上げとともに、兵庫県から京都に引っ越ししてきたばかりの頃は、
私たちは旅行者の気分で過ごしていましたので、眺めが良いというスポットを教えて
もらっては、送り火見物に出かけたものでした。
しばらくして、両親が2年ごとに亡くなっていきました。
それから、送り火は私にとって、今までとは違ったものになりました。
父と母がなくなって間もなくの頃、父と母が、私の立っているこの地面から離れて、
空高く、ご先祖様たちがいるところへ行ってしまったということを「送り火」の
炎を眺めているときに、ようやく受け入れられた気がしました。
その後、送り火を眺めていて、夏の夜風が私の頬を撫でた瞬間ふと、私も、いつか
父母や祖父母たちのいるところに行くのだということに、気が付きました。
京都の夏は、盆地特有の暑さで、夏の盛りには、四条教室のあたりは、まるで
お湯の中を歩いているかのような気分になります。
もう、我慢できないので、湯船から出たい・・・でも、出ることを許されずに、
辛抱しているような気分です。
今は、そんな日々が早く終わってほしいと願うばかりですが、ごくたまに、吹いて
くる風に、秋の気配を感じるとき、なぜか寂しくなってきます。
不思議に冬の辛さから解放される春先には決して感じることはないのですが・・。
家族と過ごした夏の小さな旅が、待ち遠しいものから、思い出の写真になる
寂しさなのかもしれません。(※写真は2024年8月の琵琶湖花火大会のもの)
学校に通う子供達には、まだ、数日間の夏休みが残っていますね。
皆さま、どうか、過ぎ行く夏の日々を大切にお過ごしください。
さて、まだまだ熱気と湿気の多いこの時期ですが、今夏は日本のあちらこちらで、
咳を伴う風邪が流行っていると聞きます。
今月は、少し珍しい咳のレメディをご紹介いたします。スポンジアSpongです。
私のブログでも、ご紹介しています。
https://ameblo.jp/sunny-garden/entry-12858467165.html
————————–
Spongia tosta ( Spong.)
————————–
レメディの原料は、地中海産の海綿(カイメン)を焙煎したものです。
Spongia tostaのtosta は、焙煎という意味です。
海綿は、原始的な動物で、これがスポンジになります。
スポンジといえば、私は、石油製品のものしか知りませんでしたが、ヨーロッパでは、
海の産物、海綿で、身体や顔を洗ってきたようです。
数年前になりますが、専門コースで、このレメディを勉強していた時、もう若いころ
からずっと海綿を使ってきた人がいました。彼女は、長持ちするし、とても心地よい
と言っていました。
ネットでも、買えるようです。
http://tennen-sponge.com/kaimen/kaimen1.html
CHKの四条教室にも、上記のサイトから入手して置いていますが、天然の海綿は、
とても軽くて乾いています。子供がこれを見つけると、つい、ボールのように
投げたくなるような、ぎゅっとにぎりたくなるような。柔らかく優しい感触です。
海綿は、無数の小さな穴が開いていて、人間の体でいうと「肺」に似ています。
レメディの症状の中心も「呼吸器」で、古くから使われてきた咳のレメディの一つです。
吠えるような空咳。
木をのこぎりで切るような音の出る呼吸と咳。
呼吸困難や、窒息感を伴う咳。
真夜中前頃に悪化する咳。
暖かい飲み物や食事で改善しますが、乾燥した冷たい空気で悪化します。
肺のそばにある「心臓」にも症状を持ちやすいレメディでもあります。
甲状腺にも関係が使いレメディです。甲状腺は、海由来の多くのレメディと関係が
あります。
甲状腺の問題を持ちやすいのは、
Iod.(イオダム/ヨウ素:海藻に多く含まれています。)、
Nat-m.(ナット・ムール/岩塩)、
Calc.(カルク・カルボ/牡蠣の殻)。
甲状腺のレメディは、ほかにもたくさんあるのですが、これら三大甲状腺レメディが、
「海」由来なのは、不思議です。
海綿は、浅い海の岩礁の下の日の当たらないところに群生しています。
成長はゆっくりで、寿命も長いそうです。
海綿は、成長がゆっくりで、濾過摂食する生き物です。
動物なのにじっとして動かないというのは、まるで牡蠣のよう。
海綿と牡蠣が似ているように、レメディのSpong.とCalc.も似たところがあります。
どちらも寒がりで、風邪をひきやすく、腺の病気を持ちやすい人です。
スポンジは、無数の穴が開いているという点では、木炭にも似ています。
木炭を原料とするCarb-v.(カーボベジ)は、消化器が不活発で鼓腸のレメディとして
有名ですが、酸欠のレメディでもあります。喘息や呼吸困難など、呼吸器症状にも
活用されてきました。
Spong.は、クラシカルホメオパシー京都では、4年次に学ぶレメディです。
ホメオパシーの専門コースでは、たくさんの精神症状や身体症状を持ち、古くから
使われてきたポリクレストレメディ(広く多くの症状に使われる)と言われている
ものから学び始めます。
とても個性的で、特徴がはっきりしていて、汎用性があります。
でも、それではカバーできないとき、Spong.のようなレメディは大きな力になって
くれます。
私がホメオパシーを学び始めたころですから、もう20年以上にもなりますが、
私自身、思春期の頃からずっと鼻炎の症状がありました。
体調が良いときは大丈夫なのですが、少し乱れると、すぐに鼻水が絶え間なくでる
ので困っていました。いつも2~3個のティッシュを、バックに準備していました。
洟水が出て苦しんでいた日、主人にたずねられるままに、そのときの特徴的な症状を
伝えました。どのような症状を言ったかは覚えていないのですが・・・。
彼はそれらをCPレパートリーで検索してくれました。
検索上位のうち、いくつかのレメディのマテリアメディカで読み比べて、Spong.を
飲んでみることにしました。
Spong.を飲んでまもなく、私を悩ませていた症状は消え去り、その後、ティッシュを
必要としない生活をしています。
たった一粒で、私はティッシュから自由になりました。
このレメディと私との類似性って?
海綿と、私の類似性。考えると楽しいです。
鉱物のような動物。
じっと動かず、少しづつ海水中のプランクトンなどを濾過摂食して暮らしています。
私も、そういったタイプです。確かに。能動的、積極性は少なく、どちらかというと
受け身的です。
森井先生の「臨床家のためのマテリアメディカ」のこのレメディのMIND症状の記述は、
たったの4行。
・美味しいものや珍味が大好き。・・・まさに、私!
・非常にお腹がすきます。・・・空腹はほとんど感じたことがありません。でも、
食べることは好き。
・喉も渇きます。・・・はい。
・甘いもので悪化。・・・悪化はないけど、あまり好きではありません。
私は、大まかにいうと、体質的に、冷えて乾いた人です。
Spong.も、熱い飲み物や暖かい食べ物で好転し、乾燥した冷たい風で悪化します。
このSpong.1粒で、私のすべてが解放されたわけではないですが、健康レベルは
一段上がったと思っています。
そして、ホメオパシーへの期待度はより高まりました。
今も楽しく学び続けているのは、ホメオパシーの恩恵を自分やクライアントさんを
通じて実感し続けているからだと思います。