今月のレメディ

『Thuj.(ニオイヒバ)』

こんにちは、CHK荻野千恵美です。

2月11日、CHK四条教室で、CHK卒業生奥永牧さんと松本美紀さん主催の
「アーサー・ビナード氏による詩の講演会とワークショップ」を開催しました。

アーサーさんは、1967年、ミシガン州生まれ。
高校時代に詩作を始め、ニューヨークの大学で英文学を学びますが、
卒論時に出会った日本語に魅せられてしまい,卒業と同時に来日されました。
日本語での詩作を始め中原中也賞、その他、講談社エッセイスト賞、日本絵本賞、
ラジオのパーソナリティとしても、たくさんの賞をとっておられます。

私は、生まれてから日本に暮らし、ずっと、日本語の中で生きてきましたが、
私が知る日本の人たちの言葉よりも、
繊細で豊かなアーサーさんの日本語に驚いてしまいました。

言葉って?
言語感覚って?
アーサーさんは、なんて繊細に出来事を感じ、豊かに表現する人だろう・・・。

私は、世界的なホメオパスであるジェレミーシェア先生が、
レメディは「詩」だといわれたことを、思い出しました。

「詩」は、事実を伝える「文章」ではない。
「詩」は無駄を徹底的に省く。
言葉は、最小限度にまで、絞られると、見えないエネルギーを発散しはじめる。
発散したエネルギーは、私たちの、目には見えない、心のひだにまで届く。
そして、深く強く、私たちの心を揺さぶる。

ホメオパシーのレメディも自然界のものを「希釈」「振とう」という
手間をかけることによって、物質レベルを超えた力を持つようになります。
そのようにして作られたレメディは、私たちの物質レベルを超えたところに
働きかけてくれ、素晴らしい治癒に導いてくれます。

ホメオパシーの四大原則の1つが『Less is more.(微量の方がより強い)』です。
これは、詩とホメオパシーに共通することのようです。

セミナー後半の詩を作るワークショップも素晴らしかったです。
「自分」という題をもらって、参加者がそれぞれに詩を作り、発表しました。
自分を見つめ、表現し、開示するのは、大変で勇気のいる作業です。
でも、参加者全員がそれをすることによって、心を開き、みんなとつながり、
元気になれたように思います。

詩作という作業は、対象物をしっかりとつかんで、
最小の言葉で表現しようとするものです。
それは、ホメオパスがセッションを通じて、クライアントさんから受け取った話を
「統合(癒やすべき点を明らかにする)」していく道のりにもそっくりです。

アーサーさんと親交の深い奥永さんご夫妻が、ぜひホメオパス仲間に
彼を紹介したいと思われたお気持ちは、セミナーを受講してよくわかりました。

ホメオパスは、クライアントさんが、世界をどう感じ、
それにどのように反応するのかということを、偏見なく受け止めなくてはなりません。
それは、言葉を通じて行われます。
アーサーさんのすばらしい言語感覚に触れることは、ホメオパシーを学ぶ人にとって、
とても良い刺激になったのでしょう。
繊細な感覚と豊かな表現力を持つアーサーさんと、
ホメオパシーを学ぶ多くの人がつながってほしいなあ・・・。

これからも、今回のセミナーの続きはしていただけるようなので、ご期待ください!

さて、3月にも2つの特別セミナーを用意しています。

〇3月15日10時~ 春の公開講座『春の会』
https://www.chk-homeopathy.jp/seminar/specialz/3120/

〇3月20日10時~「妊活とホメオパシー」
https://www.chk-homeopathy.jp/seminar/specialz/4244/

ぜひ、ご参加ください。


『Thuj.(ニオイヒバ)』Thuja occidentalis

今月は、Thujをご紹介します。

厳しい寒さの中、ほとんどの木々が葉を落とし、
むき出しの枝を寒空に突き立てているにもかかわらず、悠然と緑の葉を茂らせている。
それが「ニオイヒバ」です。
その針葉樹を原料とするレメディです。

「ニオイヒバ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%92%E3%83%90

現在では、世界中の温帯諸国の、どこでも見られますが、原産地は北米カナダ、
寒冷地の水辺に生息し、樹高20m、幹径1~1.5mにもなる針葉樹です。

葉に芳香があるため、和名では、ニオイヒバと呼ばれるようになりました。
一般名は、Arbor vitae(アルボル・ヴィタエ)。ラテン語では、
Life of Tree“命の木”という意味を持つ名前があるそうです。

日本には、造園樹コニファーとして、明治中期から入ってきました。
虫がつきにくく、成長が早いので、今では日本中でおなじみの樹木です。
生垣として目隠しに使われ、人がはさみを入れることによって、
どのような形にすることもできるので人気です。

カナダの針葉樹林は美しい。
ですが、「外側」の緑に輝く美しさとは真逆な「内側」を持っています。

葉の落ちることがない、常緑の針葉樹林では、年中、地面にまで光が届かないので
下草が生えません。森の中は暗くて寒くて空ろ。
広葉樹のような命の賑わいがありません。

この特徴は、レメディの精神症状に反映しています。

Thuj.を必要とする人は、礼儀正しいけれど、閉鎖的。
何かを隠しているような人。隠す心の裏には、自尊心の低さがあります。
自分を、どこか醜いもの、弱くて、もろくて、壊れやすいものだと思い込んでいます。
ですから、固定観念や強迫観念も強く、いろいろな被害妄想を持ちがちです。

以下は、Thuj.の奇妙でよく知られた精神症状です。

Mind; DELUSIONS, imaginations; Animals, of; abdomen, in
お腹の中に動物がいるかのよう

Mind; DELUSIONS, imaginations; Wood; made of
自分はまるで木でできているかのよう

Mind; DELUSIONS, imaginations; Glass, made of
自分はまるでガラスでできているかのよう

Mind; DELUSIONS, imaginations; Body, body parts; brittle, is
自分の体はこわれやすい

Mind; DELUSIONS, imaginations; Superhuman; control, is under
自分は超人の支配下にいる

Thujの人は、このほかにも、多くの妄想を持っています。
Delusion(妄想)とは、現実にはそうではないのに、本人は、
そうだと思い込んでいることです。

インドのホメオパシーの巨匠サンカランは、

Disease is delusion, cure is awareness.
(病とは妄想であり、治癒とは気づきである)と表現しています。

とても詩的ですね。

100年以上前に書かれた古典的なマテリアメディカでは、
このレメディは、淋病との関係についても書かれています。
ハーネマンが生きていた時代は、性病と皮膚病の全盛期。
当時は、淋病にかかったら、性器にできるコンジローム、
イボやこぶのようなものを切除することを治療としていましたが、
その治療によって病はより深まると、ハーネマンは考えました。
Thuj.は、そのように乱れた体質を健全化するレメディの代表です。
このレメディの人は、泌尿器系や生殖器系との関係が深く、
皮膚には「カリフラワー状」のようないぼもできやすいです。

予防接種の後の悪化にもよく使われるレメディの1つです。

ホメオパシーの世界では、レメディのイメージと、
映画や小説の登場人物のイメージを重ねてみることがよくあります。
このレメディのイメージは、ピノキオのようだと、
海外のホメオパスから聞いたことがあります。
ディズニーアニメで、私は、ピノキオを見たことがあるのですが、
ゼペット爺さんがピノキオを作り、女神の魔法で人間になったとき、
はじめてしゃべった言葉が、「そっとさわって、壊れやすいから。」
だったと思い出して、驚きました。

ピノキオは、よい子になるつもりで、学校に行こうとしますが、
悪い友達にそそのかされて、おじいさんに嘘をついて、
こっそり芝居小屋に行ってしまいます。
Thuj,は、罪悪感のレメディでもあります。人目をはばかるような、
行ってはいけない場所に行ってしまう・・・どこか「性病」のイメージとも重なります。

クジラのおなかに閉じ込められたおじいさんを助けに行きますが、
Mind; DELUSIONS, imaginations; Animals, of; abdomen, in
お腹の中に動物がいるかのようという妄想の症状を彷彿とさせられます。

嘘をつくと、鼻が伸びてしまいますが、Thuj.の皮膚症状の、
「茎のあるようなイボ」のイメージに重なります。

Thujの人は、自分を弱く醜い存在だと思い込んで、きれいに見せようとします。
秘密主義。弱さをカバーしようとして、何事もやりすぎてしまう過剰感。

このレメディイメージにぴったりなのが、画家のアンリ・ルソーの作品。
静かで、謎めいた作品の数々。
野生の動植物も、人々の営みも、あまり「命」の躍動感を感じることはありません。
「命の木」というこの植物の対極の世界を感じさせてくれます。

画家の作品や小説家の物語の中にも、
Thuj.的な存在が、人知れず鎮座しているのかも知れません。